Galleria ASSISI
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The Tympanum
タンパン

　オリジナルのギリシヤ語とそれに続いてラテン語による表示が、教会の基底部を含む、中継ぎの間、外側と内側の中間（柱廊）にある。
　それは、構造物一杯にタンパンが広がる空間となっている。「入口扉全面を覆う楣と円天井門の間の空間」（プティ・ロベール辞典）は、あらゆる通行人や巡礼者、そして旅行者たちをも魅了する。
　実際の方法としてはモワサックやヴェズレーと様式が異なり、コンクのタンパンには中央に王たる審判の救世主、大きくて力強いキリスト像が座している。
　石工たちは、聖フォワの奇跡話で知られる人々と同様に、非難を受ける側に選ばれし者たちの中に、地元の歴史上の人物を配した。この造形の基礎は、地元の歴史の上に寓話的解釈演出法を発展させたものである。
　各部に区分けされ、各場面を詳細に分析することが可能で、救世主の周囲との深い繋がりは見落とすことができない。

The Observer
観察者

　これは好奇心の強い人物で、髪は真中で分けられ、鼻先はそっくり返り、持っている潔白の聖句の背後から目をこらしてじっと見ることができ、聖句を上と下から持っている。この人物はタンパンの円天井門に沿って繰り返し14回見られる：これには完璧な数字が計算されており：14÷2＝7。8番目が地平線で、それぞれが連続している。終末論の完全を指し示している。

　聖ペテロの引用によると、これらは天使的な人物群であろうか？「この救いについては、預言者たちが真剣に探り求め、熱心に調べたテーマであった（中略）そして、彼らが取り扱ったのは、自分たちのためではなく貴方たちの時代のためだったことが彼らによって明らかにされた（中略）この事は、この天使たちが永遠に知るところである。」（一 ペテロ1, 10-12）

Christ in Majesty
光輪の中のキリスト

　中心には、救世主たる栄光の王が光輪の中に座している。主の栄光は、雲のような特徴的な楕円形のマンドラが主を取り巻いて光り輝き、再び現れるという主の復活の状態を示している。主を取り巻く星は簡単に認識できる模様で、2人の天使がロウソクを抱え、−鍮細工―下にいて、もう2人の天使のような人物が主の上にいる。

　キリストは、長いチュニック（袖の長いぴったりした上着）で東洋の様相に包まれ、首の周りにパリウム（T型のバンド付き祭服）を着け、教皇と教会高位聖職者のために取って置かれている黒い十字架と白い羊毛の刺繍のスカーフを身に付けている。

　キリストの右手は力強く、上8つの星の1つに向かって上げ、左手は広げている。

　「私たちが信頼してみつめる貴方は、審判の時に私たちに永遠の幸福を共有させてくださる。」（キリスト降臨のとりなし）

The Cross of Christ
キリストの十字架

　「この芸術作品は、時間と空間の中で、全ての黙示が集中して取り巻くある１点に―イエス・キリストの十字架がある」とルバクは著している。（1）

　説明箇所にはそう告げる理由が挙げられて、それは十字架の上にSREXIDEORUM：（ナザレのイエス、ユダヤの王）と読むことが可能であるとされている。

　　2人の無重力天使は翼が虹色で、槍（LANCEA）と釘（CLAVI）を持っている。

　太陽（SOL）と月（LUNA）は擬人化され、イエスの死の時「聖金曜日」に月・日食となった。これらの天的な体は十字架を受け取ることにより贖われる時をも表現し、聖シリルがそれ故に「キリストの栄光は彼の十字架である」と明言している。「OC SIGNUM CRVCIS ERIT IN CELO CVM（この十字架の印は天国の中にあり）」と未だ読みとることができる。

　このような苦悩の日々が過ぎると、すぐに太陽は暗くなり、月は光を失い、星は空から落ちるだろう（中略）それから天国には人の子を予告する印が現れるだろう。全ての世の人々は、偉大な力と光栄をもって、天国の雲上に現れる人の子を見るであろう。（マタイ24、29-30）（1）ピエール・サグレ「コンク・美術・歴史・聖性」トリコルヌ出版　1997

The Horn Blower
ラッパ吹き手

　人の子が、偉大な力と栄光を持って天国の雲に乗って来る。人の子は、天使たちにラッパを吹かせ遣わせ、天使たちが選ばれし者たちを集めるであろう（以下略）（マタイ24,30-31）

　雲が上のパネルに広がり、神の無限を表している。モーゼがタボル山（ナザレの東部にある山）で十戒を受け取ってから、メシアが最終的に到来するまで、雲は神の栄光を表している。（出エジプト 40, 34）雲は、選ばれし者たちが砂漠を通って天国まで旅するようにと導くであろう。それは、「死からの最初の骨であり、雲に乗って来る地上の王たちの統治者である誠実な目撃者、イエス･キリスト」の再来を報告している。（黙 1,5-7）

　大贖宥の日にオリファント（象牙製角笛）と ショファー（羊の角でつくられた軍ラッパ）を吹く天使の着物の縁には、コウフィク文字（古代アラビア語）で「幸福」や「栄光」と解読できるだろう。それは、サンチャゴ・デ・コンポステッラまでの巡礼路に沿って施されるモサラベ（ムーア人の征服後のスペインでムーア王に服従することを条件に信仰を許されたキリスト教徒）の職工たちの印である。ピュイの大聖堂と、ここコンクの門碑の両方に彼らの仕事の印がこのように示されている。

The Messengers
使者たち

　4人の天使たちが翼を広げ、選ばれし者たちの行進の方へ顔を向けている。

各々が光輪をもち個性的な髪型をして、聖句を斜めに掲げ：囲い（聖句）は下層の屋根に相当している。

UMILITAS：「謙遜 Humility」と、『主の下僕』である聖母マリアの上に書かれている。聖ベネディクトの会則には、このキリスト教の貞潔が12の階級としてその概要が述べられている。

 更に、CONSTANTIS：「不変 Constancy」が2番目に来る。それは、キリストに倣いて試練、誘惑、執着の時の忍耐である。

CARITAS：「私たちへの神の愛 the love of God for us」、そして私たちの隣人を愛すことができるためにと、第4の聖句にCREDITORIS ET SPES：「信頼と希望 Faith and Hope」を述べている。

The Procession of the Chosen Ones
選ばれし者たちの行進

キリストへより近づこうと、聖霊をより育もうと：選ばれし者である聖人たちの力強い行進が、ここに表れていた。

筆頭に、聖母マリアが合掌して青衣を着ている。続いて、十二使徒のペテロがチャズブル（アルブの上に着る袖なし服）を着て：ペテロは司牧杖と王国の鍵を持っている（マタイ16,19）。両者とも神聖を示す光輪がある。

3番目に：コンクの初期礼拝堂の創設者ダドンが、隠者の象徴であるT型の杖を持っている。

修道院長は笏杖を持ち、聖餐式用祭服のストールを着て：花で飾られた王の笏を持ったカール大帝（Charlemagne：742〜814年フランク国王、神聖ローマ帝国を興して皇帝カルロス1世CharlesIとなった）を率いる。2人の侍者（儀式の際、聖旗をもつ役）は、「皇帝の修道院に対する寛大の印」である聖遺物とディプティック（祭壇背後の二枚折り画像）を持っている。

他よりも小さい4人の人物には各々光輪があり、行進の後を付いて行く。聖ヴィンセントが助祭の聖カプレを連れている。もしくは聖ヤコブに続く聖ヒエロニムスと、1人の殉教者が棕櫚の葉を持ち、もう一方の手を後に、神のご意志を受けているのを描いているのであろうか。または、聖アルベルト、聖フォワの姉妹であろうか？

最後に、最後尾の人物は：その足が他の選ばれし者たちと違う方に向いているが、顔はキリストを振り向き、手は神の恩寵を受けるように広げられ：全ての改宗の典型となっている。

Mary and Peter
聖母マリアとペテロ

聖なる救世主に加え、修道院と修院教会の主な守護には、聖母と聖ペテロが含まれる。ここに、光輪を伴いキリストに顔を向けている。

聖母マリアは、彼女の息子に最も近い人間で、神聖な儀式では最初に来る。「合掌し顔は厳かで、まるで導きとりなしているかのようである。」（2）同様に落着いた容姿は、修院教会内、北の翼廊にある彫刻グループの中の受胎告知に見ることができる。ペテロが次に来る。ペテロは背教者であるにも関わらず、十二使徒の最初で、メシアはペテロと共に聖人たちの社会：いわゆる教会を作り上げている。笏杖と同様に、監督の衣：アルブ（聖餐式用白麻服）、 チュニック（短めのダルマティカ）、 ストール、チャズブル、パリウム（首とT型バンドの服）は最上部の大部分が壊れている。ペテロはまた、修院の古記録の表現によると、「神聖な王国の鍵の担い手」ともある。（3）

彼らの2つの光輪は、雲に包まれてキリストのマンドラの反射のようであり、また明るい雲に包まれている。

（2）ピエール・サグレ「コンク・美術・歴史・聖性」トリコルヌ出版1997
（3）修道院長ルイ・ブスケ「コンクの最後の審判」カレーレ出版　ロデス1948

Saint Foy
聖フォワ

丸くなったアーチには、円柱に大きな飾り文字が施してあり、「彫刻の施されたタンパンをもつこの建物は、コンクの街で建てられた大建造物であること」を意味する。（4）四角い祭壇と聖杯は、日々の聖餐式の奉献を表している。手かせは、奉納物として吊るされ、捕虜たちが聖フォワのとりなしで解放されている。そして、聖フォワは自身の席の前で、領主の手の前に従者のごとくに平伏し、横たわっている：つまりこの神の手は、人知れぬ雲と表現不可能な魅惑から延びる十字架像の形の光輪に包まれている。

「敬虔の友（聖フォワ）」は、1人の天使としてこの単独での祈祷場面の下に描かれている。

その青衣と合掌の手は、私たちの小さな聖人（聖フォワ）の聖母マリアとの親交を示しており、宝物に見られるようなデザイン性をもって施され、2つの携行用祭壇にはエナメルが塗ってある。

2つの碑文には、その場面が書かれている。AD CELI GAUDIA（天国での喜び）と上部に書かれている。下部には、2つの至福：「優しさ」と「敬虔の友」が、1人の天使の姿をした聖フォワによって描かれている。

（4）マリー・ブスケ「11・12世紀のコンクの彫刻」リル大学論文　1973

The Heavenly Jerusalem
天国の如きエルサレム

12世紀、エルサレムは世界の中心として認識されていた。しかし、遥か彼方上のこの街は天啓の中に表現される天国であり；それは天国の如きエルサレムと呼ばれ、ここに表現されている。

アブラハムは、十字架、狭間の搭と尖塔を持つ屋根を上に持つ柱廊下の中心に座している。「人の父」アブラハムは、各々が花飾りの笏を持つ2人の選ばれし者を迎え入れている。アブラハムの左手横（向かって右側）には2人の預言者がおり、光輪があり法典の巻物を抱えている。次に2人の女性預言者がおり、旧約聖書に更なる解釈を加えている。

長老（アブラハム）のもう一方側には、新約聖書の姿があり： 1つの聖杯を持った2人の光輪のある男がいる。「聖餐式の変化と合致する」との下辺の記述には注意が必要である。

それから2組の二人組みの婦人が続く。最初の一組は、軟膏（死と復活！!）を抱え：次の一組は、福音書に関するページの開かれた本とランプの灯火を抱えている（マタイ25.1-13）。

屋根のパネルには、この聖なる街の神聖な住人が記述されている：純潔、貞潔、平和、優しさ、敬虔な友：それゆえ、彼らが恐れるものは何もなく、喜びに満ち溢れ、安全を留めているからである。

Abraham
アブラハム

アブラハムは人の父である。神の呼び掛けに答える旅路に出発したことにより、全ての信者の典型となる。イエスを同様に認識すると、キリスト教徒とイスラム教徒は皆アブラハムの子孫で、「浜の真砂のように、数えることができないほど多く」の家系を形成している。（創世記32,13）　

タンパンには、アブラハムが天国のごとくエルサレムの中心に座している。アブラハムの腕は、各々が花飾りの笏を持つ2人の選ばれし者たちを抱いている。この2人の子供たちもまた、アブラハムと侍女ハガルの息子イスマエルと、アブラハムと妻サラの息子イサクを想起させ：これらの姿は、聖パウロによって寓話のように翻訳された（ガラテヤ人へのパウロの手紙4,24）。

アブラハムは、もう片方の「乱雑」と「混沌の友人」、ルシフェル（魔王サタンの異名）の反対側にこのように王座に座っている。

南の回廊の頭には、アブラハムが息子のイサクを生贄として捧げる準備をしている。これは、イエス・キリストが彼自身の命を捧げるという前兆の古典で、各聖餐式の折りに思い起こされた。

The Resurrection of the Dead
死の復活

これらの棺は、絵画的場面を作り上げている。最初は閉じられている。次からは１人の天使によって棺の蓋は半分開けられ、頭と手には「新鮮な状態で血が流れ」、そして時間の経過で「死の舞踏」の骸骨とは異なった姿で現れている。12世紀に死の復活を信じることは、全人間の間では、クレド（使徒信条）の中に表現される物事で、新鮮な復活を信じることである。

2つの碑文は、このように読まれる：彼らは、下が何であるかと同様、上が何なのかを表現している。

VICTIS GLORIA PAX REWUIES PERPET.
勝利する者には、栄光、平和、永久の休息が。

SIC STANT GAUDENTES SECURI NIL ME.
これは、喜びと安全を留め、（恐れること）は何もない。

The Weighing of Souls
魂の重さ

大天使聖ミカエルが羽を翻し伸ばしている。「貴方の羽の影が避難所となる」と、詩編（57,61 及び91）はいう。これは、カラバス（瓢箪でつくった器）に象徴される魂が、なぜ聖ミカエルの前で地面に置いてあるのかである。

反対に、幽霊のような悪魔が指で量りを押して欺こうと試み、その間、もう一方の手では対称的に注意を誘い、戸惑わせようと試みている！量りでは量りえない価値が、右方向（向かって左側）に傾いている。

このような古代の方法は、エジプトでは他の方法で存在する：死者の心臓は、42の神々によって復活させられた死の王国の君主、オシリスの現存として量りに掛けられる。マートの大羽根、真実の女神が、量りの反対にいる。もしその心臓の方が重ければ、飽くなきマートが即座にそれを貪り食べる：もしそうでなければ、亡くなった人は、永久に赦される。 

日本語訳について

この「コンクのタンパンの詳細について」は、現地冊子をガッレリア・アッシジで和訳したものです。
森田貴博　平井栄美　共訳
Copy right reserved by Galleria ASSISI

Texte par le frere Jean-Regis Harmel, Prieur de l'abbaye Sainte-Foy - 12320 Conque
Depot legal: septembre 1998